で、『CRIMINAL MINDED』ですよ...まさに満を持して、って感じです。デラックス・エディションの発売がアナウンスされ、それが二枚組という体裁だと知った時は“ほぉ”と興味をそそられたものの、オリジナル盤(CDですが)とデジタル・リマスター盤を所有している人間にとってはさすがに今回は縁がないかな、と思っていましたが...なんだかんだで結局買ってしまいました(泣)。 まず、商品がSTAXの50周年盤と非常によく似た豪華な作りで、二枚組の特殊パッケージという時点で反則なんですが(スゴイ重厚感!)、未公開の写真やイラスト、バイオを中心とした完璧に近い出来のライナー、リリック(国内盤には対訳も!)、インタビューに加え、B.D.P.が大所帯クルーだった時代(→SCOTT LA ROCK AND THE CELEBRITY THREE笑)の曲『Advance』『$ucce$$ I$ The Word』や初期音源『Say No Brother(Crack Attack Don't Do It)』、アルバム収録曲の別ヴァージョンがまとめられているのは感涙モノ。アタマとケツにRED ALERTのベシャリが入った『The Bridge Is Over』こそ大きな違いはありませんが、『Come Clean』みたいな音処理がドープな『The P Is Free』、時折挿入されるサンプルがナイスな『Elementary(Dub)』(僕はこっちの方が好きかも)は一聴の価値アリ。 LP以前の音源もやっぱりレベルが高く、特に『Advance』のような音使いは、最近の新譜でも聴けたような(具体的な曲名は出てこないんですが...)。この曲はインストも収められているのですが、音だけ聴いても、色褪せないカッコ良さに毎度驚かされます。
本編に関しては、当時敵対していたクイーンズ・ブリッジのMARLEY MARL一派にブロンクスこそヒップホップの聖地と挑戦状を叩きつけた云々、の話は耳にタコなのでショートカットするとして、聴けば聴くほど新しい発見があります。それこそ、この作品が名盤と言われる所以かもしれませんが。 現在の音楽シーンとの関連という事なら、面白いのが『9mm Goes Bang』。温度低めなローの処理とラガなフロウは、ダブステップ/グライムの文脈でも聴けそうです。 SAIGON『Come On Baby』にヤラれた人には『Dope Beat』を。20年以上も前のAC/DC使い...まさにドープ。 また、『Poetry』『Word From Our Sponsor』『Remix For P Is Free』いずれにも共通する、シンプルなビート+キメのサンプリングという手法は今こそ受け継がれているものなので、未聴の人にはフツーにフレッシュに響くのではないでしょうか。それにKRSのラップぢから溢れるパフォーマンスが加われば、怖いものナシです。
WILD PITCH RECORDSのマイナー名盤といえば、忘れてはいけないお皿はまだ他にもありまして、HARD KNOCKS『SCHOOL OF HARD KNOCKS』なんかもその一つです。 強引なのを承知で区分けするなら、WILD PITCHの音は、ジャズ色の強い、90年代中盤のサウンドのひな形となっていくものと、“ミドル・スクール”という言葉で連想できるような、ブレイクビーツの気持ち良さを追求したものとの二種類があると思うのですが、『SCHOOL OF HARD KNOCKS』は完全に後者で、さらに、ハデさを兼ね揃えた同系統のCHILL ROB Gなどと比べると、よりムダを削ぎ落としたシンプルな印象があります。 とは言っても、JBを始めとするファンキーな大ネタ使いは、B-BOYのツボをガンガン突いてくるものなので、特にミドル好きには辛抱たまらん内容。ネタの調理方法も、今となってはなかなかできないモロ使い&複合技が多いのが楽しく、オリジナル盤に高値がついているのも、この作品の完成度の高さを物語っているのではないでしょうか。
BILL WITHERS『Who Is He & What Is He To You』にチープなアコギを乗せた『A Dirty Cop Named Harry』に始まり、 STAXっぽいホーンなど、60年代サザン・ソウルに通じる泥臭さが◎な『Nigga For Hire』、 GANGSTARR『Royality』とネタかぶり(?)なキラキラしたピアノと、90年代のテキサス産G-RAPを思わせるもっさりとしたベース、終盤のサックスソロが聴きどころの『Ghetto Love』、 ダンサーが歓喜しそうな、ブレイクビーツの鳴りが心地良い『Thoughts Of A Negro』(フロウがNASチックなのはご愛嬌)、 トライバルな印象の強いCYMANDE『GETTING IT BACK』を上手く料理した、激アッパーな『Opposite Side』など、特に前半のクオリティはハンパじゃない! 余談ですが、『Ghetto Love』が『Royality』と同ネタだとすれば、ソースはLATIMORE『Let's Do It In Slow Motion』ということになるんですが...はたしてプリモ以外の人間にあんなクリエイティヴな仕事ができるものだろうか?詳しい方、情報くださ〜い。
他にも、DONALD BYRD『Weasil』→『Blow To Your Head』、 BLACK HEAT『Zimba Ku』→『Young Black Male』、 ESTHER PHILLIPS『Home Is Where The Hatred Is』→『Young Guns』とネタ使いした曲は、どれもまんまなので悪くなるわけがない。 極めつけは、JB『I Got To Move』の、中盤でビートが変わるトコをかけ声ごとベタ敷きした『Strictly From The Bronx』。ライドの響きとベースのうねりの気持ち良さに昇天必至です。
DJをやっていたりレコードを掘っていたりする人であれば誰しも、一枚か二枚はマイ・クラシック・アルバムを持っているハズで、その皿の素晴らしさをもっと広めたいと思う反面、いざリイシューやCD化が実現するとちょっぴりガッカリしてしまうもの。 そういう、僕にとっての隠れマスターピースのうちの一枚が、1993年にリリースされたBROKIN ENGLISH『KLIK』(ずっとBROKIN ENGLISH KLIKというグループによるセルフタイトルのアルバムだと思っていたんですが、本国のサイトではこのように表記されているので、BROKIN ENGLISHというグループによる『KLIK』というアルバム、というのが正しいっぽいです)。ネーミングセンスは微妙ですが、中身はホントに言うことナシの大傑作で、とりあえず、BLACK MOON『ENTA DA STAGE』とSMIF'N'WESSUN『DAH SHININ'』が好きな人は絶対気に入る...というか、個人的にはどちらも甲乙つけ難いとさえ思っています。
THE GOVERNORから、最近たまたまTOWER OF POWER〜THE COUPと続けて聴く機会があってあらためて実感したのですが、オークランドの音は、総じてドラムがカッコイイ。 タイトなキックに乾いたスネア、なんて言ってもベタな聞こえ方しかしませんが、TOO $HORTとかにしてもそうなんですけど、クラブ向けというのとは別の意味でリズムの聴こえ方が心地良いブラック・ミュージックって、案外オークランド産のものが多いような気がします。
THE COUPのサウンドは、なにげにベースから鍵盤、サックスからフルートに至るまで生楽器奏者を迎えて作られており、そこにDJ PAM THE FUNKSTRESSがスクラッチやブレイクビーツでズカズカと割り込んでくるという、緻密でありながらラフな感じが最高にオリジナルなのですが、クレジットの“Producer's notes”を読めば、グループの頭脳であるBOOTS RILEYのドラムに対するこだわり・自信が伝わってきます。
WILD PITCHクラシックでもあるデビュー作『KILL MY LANDLORD』は、と・に・か・く・ファンクなアルバム。“ヒップホップでファンクを感じさせる作品は?”と訊かれたら、僕の場合真っ先にコレとDELの『I WISH MY BROTHER GEORGE WAS HERE』が頭に浮かびます。 1曲目に置かれたクラシック・チューン『Dig It』は、イントロを聴いただけでもドラムとベースの黒くてブッ太いコンビネーションに圧倒されること間違いなし。僕は幸運にも、以前GALACTICの来日公演で生BOOTS様を拝むことができたのですが(ラップも動きも見た目もまんまでした!)、そのGALACTICの名手、STANTON MOOREのドラミングにも劣らないライヴ感は、思わず“ホントにサンプルかよ?”と疑いたくなるほど。 続く『Not Yet Free』は、手数が多いながらも締まったドラムが聴きどころの、ダウンテンポなヘヴィ・ファンク・ナンバー。時代を考えると、BPMが遅めな曲はどうしても地味な印象になってしまいがちなのですが、THE COUPの曲はどれも重低音がスゴイので、特にローの効いたスピーカーやヘッドフォンで聴いたら、ガンッガンに頭を振れます。 その他にも、G-FUNK風味のピアノロールが地域色を感じさせる、『Not Yet Free』と同路線の重たい『The Coup』、 ハットとリムを左右に振り切ったパンニングが実験的な『I Know You』など、中毒性の高い曲がズラリ。 ハイライトは、アルバム唯一のアッパー・チューン、『Funk』。疾走感溢れるドラムにキャッチーなベースとピアノ、ソウルフルなホーンのディレイと、LARGE PROFESSORなんかの作品にも通じるカッコ良さにヤラれます。ピアノループが変わり、ガシガシと小気味良いコスリが入るブレイク部分などは、グラブプレイでも色々と応用が利きそう。
“If it had been released a mere four or five years earlier, the highly politicized Kill My Landlord might have gained the Coup nationwide notoriety and platinum album sales. As it was, gangsta rap was all the rage, and Kill My Landlord achieved only moderate sales but nearly unanimous critical acclaim.”
アタックの強いギターが激ファンキーな、高揚感を煽られるアタマの『Born And Raised』、 ブリブリのベースにワウギター、ピーヒャラシンセに女性コーラスと王道感たっぷりな2曲目『Hustlin' Is The Final』の時点でつかみはバッチリ。ジャケの通り、インパラとかで流しながら聴いたらさぞかし気持ちイイんだろうなぁ。 2PACが参加しているというだけでこのアルバムを買った人も少なくないと思うのですが、『Po' Nigga Bluez』でのパフォーマンスはさすがのカンロク。音質はちゃんとレコスタで録ったのか疑わしい感じだし、フロウもメチャクチャ粗いんですが、聴き応えあります。『Just The Two Of Us』ネタかと思いきや実は『Oh Honey』がメインループという、ムチャな展開のビートもなかなか。 他にも、DEBARGE『I Like It』からメロウな質感を抽出した『Still On Parole』、 エレピとフルート、ストリングスが哀愁を奏でる『Haters Rest In Peace』なども良い曲です。