WILD PITCHといえば、パッと挙げられるだけでもO.C.に初期GANGSTARR、MAIN SOURCE、ULTRAMAGNETIC MCS...とそうそうたる顔ぶれが並ぶわけですが、この度過去の名盤達をアレコレと聴き返す中、特に印象に残ったのがCHILL ROB G『RIDE THE RHYTHM』で、このお皿、意外にも今聴くと“おおっ!?”となるポイントがたくさんあったりします。
まず、どエレクトロな『Make It』の下世話っぷりがお見事。ハイフィーやらバイリ・ファンキ、デトロイト・テクノにフレンチ・エレクトロと、ここ何年かの音楽シーンでは広い範囲で“エレクトロ”がキーワードとなっていることもあり、この曲も“今の音”として十分聴けます(俗っぽいノリは完全に前者ですが)。 比較的最近のUNKUT.COMにおけるロング・インタビューでCHILL ROB Gが語っているように、45 KINGのビートを気に入っていたRED ALERTも最初は頑なにインストをかけていたというくらいなので、サウンド自体の機能性にはやはり目を見張るものがあります。性急な808ビートとワサワサしたバック・コーラスが特徴的なこの曲、アルバムの流れから言うとかなり唐突なのですが、あらためて聴くと妙にフレッシュ。
12インチのディスク・ガイドなどに高確率で載っているクラシック『Court Is Now In Session』も、やはり色あせない名曲...ってか、GRAHAM CENTRAL STATION『The Jam』のビートに『Soul Power '74』のホーンを乗っけた時点で反則技なんですけどね。悪くなりようがないです。 ドイツのアーティスト・SNAPによるカヴァーが本人の意向を無視してリリース→大ヒットした、いわくつきの『The Power』(ARISTAの陰謀云々の話はインタビューでも言及アリ)は、当たり前ですがオリジナルがイチバンの出来。OLに聴かせたら“Crazy In Loveみたい~”とか、脱力しそうなセリフを吐かれそうですが、とりあえずドラムのカッコ良さは文句のつけようがないです。パッドを始めとする音のチョイスはさすがに時代を感じさせますが、イコールダサい、とならないところなんかもミソ。 さらに、POLICE『Voices Inside My Head』をベタ敷きした『Let The Words Flow』(最初に聴いた時の衝撃を思い出して遠い目...)を筆頭に、大ネタ『N.T.』使いの『Let Me Show You』、RASCO『Take It Back Home』でオナジミBILLY PRESTON & SYREETA『Books And Basketball』のホーンが印象的なその名も『Wild Pitch(Remix)』など、直球勝負なサンプリング・ワークが楽しめます。
少なくとも、僕の周りでCHILL ROB Gがサイコーだという話は聞いたことがないのですが、アルバム一枚で消えたとはいえそれがクラシックとなったアーティストなので、リリックなどはネット上で比較的カンタンに拾えます。語尾で堅く踏んでいくスタイルは決して目新しいものではありませんが、随所に巧い言い回しがあったりするので要チェックです。 あとはやっぱり、上で挙げた濃密なロング・インタビュー。“純粋なオリジナルFLAVOR UNITじゃなかったのね!”とか、“売れなくなったラッパーはマジで警備員やスーパーの店員になるんだ...”とか、目からウロコな話が満載です。