ブルースにおける名門中の名門、チェス・レコーズ(厳密に言えば前身のアリストクラット)の設立60周年を記念して、ブルース&ソウル・レコーズ誌主導で進められてきた紙ジャケ・リイシューも、はや第三弾。 遂にやってくれました、MUDDY WATERSの1969年作「AFTER THE RAIN」が、世界初のCD化です。今回も、"ルビジウム・クロック"という、人工衛星などに使われている技術をカッティングに際して採用しているそうで、比較対象となるモノがないので何とも言えませんが、とりあえずスゴそうな事だけは確か^^;
「AFTER THE RAIN」といえば、僕個人としては歌・演奏・ジャケともにバッチリな、MUDDY WATERS屈指の名作との思いが強いのですが、ロックとの積極的な邂逅が伝統的ブルース・ファンの酷評を買った「ELECTRIC MUD」(1968)の続編的な位置づけからか、MUDDY作品の中ではさほど話題に上る機会は多くないような気がします。単品のディスク・ガイド並みに重厚な、レコード・コレクターズ誌10月号のチェス・レコーズ特集(ブルース・ファン必見!)中にある"チェス・レコーズの名盤80選"からも、思いっきり漏れていたりするので...(苦笑)。 それだけに、JOHN LEE HOOKER「HOUSE OF THE BLUES」やLITTLE MILTON「WE'RE GONNA MAKE IT」といった名盤達をさしおいて、この作品がCD化の栄誉を受けたのはかなり意外な展開でしたが(ちなみにこの2作は第四弾のリイシューで登場決定、金がなくなるー!)、自分のオールタイム・フェイバリットが手軽に、かつ高音圧で聴けるようになった事は素直に喜びたいです。
そんな賛否両論の問題作「AFTER THE RAIN」ですが、肝心の内容はというと... 重く、煙たいビートが最高にグルーヴィーな、冒頭の「I Am The Blues」からして既にヤバすぎです。作者は、ブルース界のDR.DREことWILLIE DIXON(僕が勝手にそう呼んでるだけです)。LITTLE WALTER「HATE TO SEE YOU GO」を聴いていても思ったんですが、WILLIE DIXONのサウンドは完全に"チェスのサウンド"ですね。ゆっくりと、しかし確実にズブズブと泥沼に沈み込んでいくような中毒性(今で言えばスクリュー&チョップにも似た感覚?)は、実に彼の真骨頂です。 そして、キメのリフで昇天確実なヘッドバンガー「Ramblin' Mind」, 小気味良いノリが非ブルース・リスナーも必聴のアップ「Rollin' And Tumblin'」, ダークなイントロの展開が鬼ハーコーな「Bottom Of The Sea」と、特にアタマ数曲は震えっぱなしのカッコ良さ。 加えてサイコーなのがジャケで、MUDDY WATERSの名前の由来とも言うべき、泥水まみれの姿のモノクロ写真(カエル付き)。これを見るに、批評筋の酷評とは裏腹に、MUDDY本人はこの作品をけっこう気に入っていたのではないかと思います。
それと、こじつけみたいで恐縮ですが、僕が最初に言及した、UGKとのリンクを最も強く感じさせるのが、この「AFTER THE RAIN」なんですよね。共通項目はズバリ、"洗練の中の泥臭さ"。いかがでしょう? こうして音楽は続いていく...。